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「あの 小さいのはこぶしやね。」

木蓮の並木道を車で走っている時、後部座席でおばぁちゃんが言った


おばぁちゃんは92歳だ
お肉が好きだし、絵や書道などの趣味もあって
とても元気な人だったけれど ここ数年でめっきり年老いてしまった


おじぃちゃんっ子だった私はなぜかおばぁちゃんと話す時、少し緊張する
慣れていないのだ
ふたりっきりで行動したことなんて1度もなかった

この日も、母が一緒だったのだけれど母は用事があったので
私がおばぁちゃんを送って行くことになっただけ

そして、帰り道にスーパーに寄り
おばぁちゃんが必要とするほんの少しの買い物を一緒にしただけ


80歳代でもシャンと背筋がとおっていたおばぁちゃんの背中は
いつのまにかこんもりと曲がってしまい
「不格好だからいやだ」と言っていた杖が離せなくなってしまった

その杖をつきながらでも危なっかしくなってしまうので
逆の脇から支えて歩いた

そろりそろりと歩くおばぁちゃんの横で
2階にあがる階段を見ながら、エレベーターがないことに心の中で悪態をついていた


お会計をする時、おばぁちゃんはふくれきった小銭入れからではなく
お札入れから千円札を出した

私はずっと、老人がレジで札を渡すのはお金があるからだと思っていた
小銭をつまみ上げることが どれだけ大変なことかなんて考えたこともなかった


スーパーからおばぁちゃんの家はすぐに着き
私はまたおばぁちゃんの脇に立ち、一緒に玄関に行った

おばぁちゃんは鍵をドアノブにある鍵穴に差し込んだ
けれど、なかなか開けることができない
固いのだ
私が変わって鍵を回した
簡単にカチャリという音と共に鍵は開いた


私は買ってきたものを次々と冷蔵庫に放り込んだ

久しぶりのおでかけに疲れきっているおばぁちゃんにやんわり挨拶して車に乗り込んだ


車を発車させながら 私は小さく「くそっ」とつぶやいていた・・・

腹が立って、むしょうに腹が立ってしかたがなかった

私の母を産んでくれたおばぁちゃん
物がない時代、苦労しながら生きてきたおばぁちゃん
私の何倍も生きてきたおばぁちゃん

誇り高く 威厳をまきちらしてもいいはずのおばぁちゃんが
どんどん自由のきかなくなる体と戦っている
何をするでも人に頼らなければならず
デイケアの若い人には まるで子供に接するような口の利き方をされる

けれど、おばぁちゃんはそんなことに腹を立てるのではなく
絵筆を持つことすらしんどくなってしまった自分の体をふがいなく思い
洗濯物を取り込むことすら出来ない自分に腹を立てながら
「すまないねぇ。」と繰り返し、どんどん小さくなってゆく・・・



「どうして・・・なんで・・・」

やりきれなさに 運転しながらつぶやいていた


木蓮の並木道


散ってくる花びらを見ながら 私は泣いた
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